<DIY!>クロモリロードバイクにボトルケージ用のダボ穴を増設する方法

クロモリフレームの魅力のひとつに「素人でも加工ができる」という点があります。さすがに本格的な溶接作業等は無理ですが、フレームにボトルケージ用の穴を追加するくらいであれば比較的容易です。

…というわけでダボ穴の自作作業について書いていきます。


今回はクロモリフレームに対してやっていますがアルミフレームでも不可能ではありません。

とはいえ、極薄のアルミフレームだと応力が集中した場合が怖かったりもしますのであまりおすすめはできません。書く必要も無いと思いますがカーボンフレームに対してはやめておいた方が無難です。


・手順としてはこんな感じです

フレームにダボ穴を追加する手順としては以下となります。

①電動ドリルでフレームに穴を空ける
②特殊なナットを専用工具で穴に固定する

道具さえ揃っていれば作業としては至って単純です。「特殊なナット」と書いてはいますが普通にアマゾンで買えますからね。

・必要になる道具について

では道具関係について見ていきましょう。


必要になるものを全て書き出すと以下となります。

・インパクトドライバー(電動ドリル)
・ドリルビット
・キリ
・ナッター(ハンドナッター)
・ナット(ナットリベット)

では簡単に説明をしていきます。

インパクトドライバーについて

インパクトドライバーというのはざっくりと言えば強力な電動ドリルのことです(※厳密には違いますがさほど気にする必要はありません)。


個人的にはボッシュの定番品を長年使っています。このメーカーはとても有名なのでどこかで見かけたことがある方も多いと思います。


<使っているインパクトドライバー>

クロモリフレームのチューブは板厚が1mmも無いためインパクトドライバーほど強力なものではなくても穴を空けることは不可能ではありません。

…とはいえ、『どれくらいのパワーが必要なのか』ということが現物確認になってしまうので、中途半端な買い物をしてしまうと「安物買いの銭失い」になってしまう可能性があります。

安価なものはパワーも弱いですのが、回転数の調整が出来ない場合があることにも注意する必要があります。回転数の調整が出来ないと精密な作業に対する難易度が跳ね上がりますので非常によろしくありません。


個人的には多少オーバースペックでもそれなりの商品を買ってしまうのが正解だと思います。

 

ドリルピットについて

ドリルピットは…まぁ要するにドリルですね。インパクトドライバーの先端に付ける部分のことをいいます。
 
これについては基本的に「下穴として中心点を出すためのもの」と「ナットを取り付けるために空けるもの」の2種類が必要です。

下穴の大きさについては直径1mm~2mm程度が作業しやすいです。それ以上大きいと中心点が分かりにくくなります。

ナットを取り付けるために空けるものについては後記します。

 

ナッターについて

ナッターという道具については聞き覚えが無い場合が多いと思います。

これについては先に「ナット」に理解する方が分かりやすいでしょうか。結論から書けば、ここで登場するナットが我々サイクリストが言うところの『ダボ穴』です。

この場合のナットはより正確に書けば「ブラインドナット」や「スパンクナット」とも言われます。これらのナットは内側にネジが切ってあるので、取り付けることで『ダボ穴』として使えるようになっています。

ナット(ブラインドナット)

…で、そのナットを取り付けるための工具であるので「ナッター」という名前が付いています。

ナッターにも複数の種類がありますが、今回のようなDIY的に使用する場合はもっとも手軽な『ハンドナッター』の出番です。

ハンドナッターの選び方については「ナット径がM5に対応しているもの」を選んでください。それさえクリアしていれば後は比較的なんでもよかったりします。

個人的には下で紹介しているものを使っています。

ナッター

グリップが握りやすいのでチカラを入れやすく、ヘッドが比較的コンパクトになっているので狭いスペースでの作業にも対応できます。『とりあえずこれを買っておけばOK』的な定番商品です。

<使っているナッター>

キリは穴を空けるポイントを正確にするために必要になります。これに関しては100均で販売されている商品で十分です。

・フレームに空ける穴の大きさについて

道具関係の説明が終わったので次の話に行きましょう。

とにもかくにもフレームに穴を空けないとはじまらないわけですが、まず「取り付けるナット(ブラインドナット)の径で空ける穴の大きさが異なる」ということに注意する必要があります。

ナットの外寸と内寸は必ずしも統一されているわけではありません。外寸が8mmのナットでも作ってる会社が違えば内寸が5mmだったり6mmだったりします。

よく分からない場合は<このナット><このドリルピット>を買っておけばOKです。この組み合わせであれば数値としてフィットします。

こちらドリルピットは使い勝手が良いので可能な限り購入を検討してください。一般的なロングリーチのピットだと狭い場所での作業が困難になったりしますし、作業時にブレる可能性も高くなります。

・かしめしろの長さについて

ドリルピット・ナット・ハンドナッターを揃えたら、次は「かしめしろ」というものを導く作業が必要になります。

この「かしめしろ」というのは『リベットをどれくらい圧し潰すのか』という寸法のことです。下写真の隙間部分がかしめしろに当たります。


かしめしろが短過ぎるとリベットがフレームと圧着せずに空回りすることになり、長すぎると圧縮力が強くなりすぎてリベットそのものが壊れてしまいます。

そのようなわけで、ハンドナッターを使ってナットを取り付ける場合は事前にかしめしろを調べないといけませんが、ダボ穴追加作業である意味最も悩ましいのがこの作業だったりもします。

かしめしろの適正幅は「挟む板の厚さ」と「ナットの長さ」で決まります(※正確に書けばナットの素材も影響しますがハンドナットの場合は必然的にアルミナットを使うことになるので省略します)。

ナッターには適正幅を導くための表が添付されていますが、残念なことに必ずしもそれに従えば100%上手くいくとは限りません。失敗の可能性を限りなく減らす場合は実際に試してみるのが安全です。

…というわけでテストをしてみましょう。


板厚1mm弱くらいの金属板にかしめしろを4パターン(3mm、4mm、5mm、6mm)設定してナットを取り付けてみました。

ボトルケージのダボ穴はがっしりと締め込むものではありませんが、それでも最低で5Nくらいのトルクには耐えれないと後々面倒なことになる可能性が高くなります。

では裏側を見てナットの状態を確認します。

6mm / 5mm / 4mm / 3mm

うーん…どうやら6mm(※一番左)だとナットが変形してしまうようですね。

このテスト結果を踏まえてかしめしろは5mmに設定しました。クロモリチューブの板厚は1mmより薄いので理屈としては6mmでも成立しそうな感じもしますが、3mmでも十分に固定力があったのでそこまで攻める必要もないでしょう。

このようなテストを省略する場合は必ず上で紹介したナットとハンドナッターを使用して下さい。5mmという数値はこの組み合わせであるからこその結果です。他のナットを使った場合は必ずにもこの結果にはなりません。

・個人的に使っている道具等のまとめ

説明の部分でもその都度書いてはいますが、個人的に使っている道具についてまとめると以下のようになります。

・インパクトドライバー

・ハンドナッター

・ブラインドナット

・ドリルピット(※ショートサイズの本穴用)

・ドリルピットセットパッケージ(※下穴、その他用)

重ねて書きますがハンドナッターとブラインドナットは必ずセットです。

また、ショートサイズのドリルピットについても『ほぼ間違いなく必須』となります。施工精度が相当変わってきますので、フレームを大事にする場合は妥協厳禁です。

・実際の手順について

では実際にどのような感じで作業をしていくのか書いていきます。

①自転車(フレーム)を固定する

当たり前すぎるかもしれませんが非常に重要です。自転車はしっかりと固定された状態で作業をしてください。固定ローラーがあると便利です。

②穴を空ける位置を正確に出す

自転車を固定できたら次は穴を空ける位置を正確に出しましょう。直接マジックでマークを入れてしまうと微調整が難しくなりますので、シールを貼ってその上にマークを打ちます。


シールについては100均で販売されているマスキングテープがおすすめです。

位置を決めたらシールの上からキリと1mm~1.5mm径のドリルピットを使ってポイントを出します。


ポイントが出たらシールの役割は終わりです。

ちなみにですが、一般的なロードバイク(MTB・クロスバイクも同様ですが)におけるボトルケージ用ダボ穴のスパンは芯芯(※穴の中心点同士)で64mmとなります。


穴の位置を決めれない場合はこの64mmという数値をひとつのグリットと考えるとスムーズです。

③フレームに穴を空ける

位置が決まったらいよいよインパクトドライバ―を使って穴を空けます。


この時に重要なのが「チューブの面に対してドリルを垂直に当てること」です。

最初にドリルを入れる角度で精度が決まりますので慌てずに良く見て作業をしましょう。角度が上手くつかめない場合はUFOキャッチャーのような感じで第三者に見てもらいながら調整をすると楽です。


フレームに穴を空けると何とも不思議な気持ちになります。

また、パイプの接合部付近に対して穴を開ける場合は角度の関係でドリルが固定できない場合が多々あります。そのような場合は以下のようなやり方でクリアすることができます。


予め穴を開けたステンレス板で「下穴」を作り、そこに差し込むことで固定させます。このような道具については<この辺りのパーツ>を流用することで代用が可能です。

この場合はフレーム…というか塗装に傷が入りますので、この辺りを気にする場合はビニルテープ等で養生しておきましょう。

④ナットを取り付ける

ここまで来たら後は作業と呼ぶほどのことでもありません。取り付ける面に対してナッターを平行に当ててナットを固定すれば終了です。


ナットが入らない場合は再度インパクトドライバーを使って「ほんの少し」だけ削ります。穴を広げるようとするのではなく、きれいな円に修正するくらいのイメージです。

固定力が不安だったり重量のあるものを取り付ける予定がある場合は固着剤をナッターの縁に塗ってから取り付けましょう。

<いつも使っている固着剤>

一般的なウォーターボトル程度であれば固着剤は不要だと思いますが、例えばフロントフォークの側面にバイクパッキング用の大型ケージを取り付けたりする場合は塗っておいた方がgoodです。

ナットは一度取り付けると基本的に取り外しができません。どのみち取り外し出来ないのであれば塗っておいた方が後悔がないというものでしょう。

固着剤を塗った場合は念のために丸一日程度放置して完全に固着するのを待ちます。


今回はトップチューブにダボ穴を付けました。これでボルトタイプのトップチューブバッグが取り付け可能になります。


ボルトタイプはストラップが不要なのでスッキリして気持ちが良いですね。

ちなみに上写真のドイターは個人でカスタムしたものです。

<関連記事>
トップチューブバッグをボルトオン仕様にカスタムする

最初からボルト仕様で販売されているトップチューブは少ないので自分で作った方が手っ取り早いです。

当然(?)ながらダウンチューブにも空けています。


夢の(?)ボトル直列付けです。50サイズのフレーム内にボトル3本!サドルバッグが不要になります。

グラベルロードとかは全てこういう仕様にしておいて欲しいなぁ…。

・もしナットの取り付けに失敗したら?

ナットの取り付けが上手くいかずに空回りをしてしまう場合は<このようなもの>を使って表面のヘッドを圧し潰してフレーム内に落とすしかありません。

この場合に困るのが落としたナットの回収作業です。

シートチューブ・ダウンチューブであればほとんどの場合でBBから落とすことが出来ますが、トップチューブやフロントフォークの場合は穴が開いていないことがしばしばあります。

かしめしろの長さをきちんと管理しておけばこのようなことはまず起こりませんが、万全を期す場合は予め『この位置で失敗したらナットの回収ができるのか』ということを想定しておいた方が吉です。
 

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